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『リエゾン』で読む、メンタルヘルスの重要性。これはただの「心の風邪」ではない。
早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系卒業。雑誌の自主制作やクリエイターチームの結成などを行い、Web制作会社にディレクターとして入社。その後、フリーランスのディレクター・イラストレーターを経て、オウンドメディアのライター・コンテンツディレクターとなる。現在はマルチクリエイターとして活動中。
自分のメンタルについて真剣に考えたことはあるだろうか。
誰しも必ず、気分の浮き沈みはあるものだと思うし、いつ自分が心身を壊してしまうかもわからない。
筆者は双極性障害(躁鬱病)なのだが、そんな筆者が『リエゾン』という漫画を読んで学んだこと、感じたことをまとめていきたいと思う。
目次
「心の風邪」という表現について
よく聞くメンタル疾患、特に鬱病の表現として「心の風邪」というものがある。
確かにメンタル疾患は目に見えないものなので、そのように例えられると、知らない人にとって、とっつきやすくなるだろう。
しかし、筆者は自身の経験や『リエゾン』という漫画を読んできて単なる「風邪」にはとどまらないと痛感している。
「治るもの」として誤解されてしまう
「風邪」と表現されると、病院に行き、薬をもらい、数日寝込めば治る。
もしくは病院に行かずとも、市販の風邪薬を飲むだけで治る人もいるだろう。
それになぞらえて、メンタル疾患も「風邪」程度の認識がされるとある程度簡単に「治る」ものと思われてしまうのだ。
メンタル疾患には基本的に「完治」はなく、症状が出なくなるが再発にリスクがある「寛解」というものがある。
なので、決して「治る」ものではないことは留意しておきたい。
『リエゾン』という漫画が教えてくれるメンタルヘルスについて
出典:リエゾン(1)-講談社コミックプラス
筆者にあらゆるメンタル疾患のリアルを教えてくれたのが、『リエゾン-こどものこころ診療所-』という漫画だ。
この『リエゾン』ではメジャーなメンタル疾患を始め、発達障害なども扱い、ストーリーを通してメンタルへの理解を深めさせてくれる。
以下で詳しく紹介していく。
様々なメンタルヘルスや発達障害を紹介してくれる
『リエゾン』は児童向け精神科の診療所に研修としてやってくる主人公である遠野志保の視点から様々なメンタルヘルス、発達障害を抱えた子どもたちと関わっていく物語だ。
主人公も発達障害的な気質が少しあり、そんな自分の特性に四苦八苦しながら懸命に働く姿もまた勉強になる。
数話かけて、ひとつのメンタル疾患・発達障害について扱っていき、その中で親子の問題や、学校に行けないといった問題など、数多くの課題に直面する。
世界の見方が変わってくる
このように、様々なテーマを扱ってくれるので、読み進めていくうちに自然と理解が深まり、「こういった特性や病があるのか」「このような対応をとるのが効果的なのか」といった気づきに繋がる。
特に、身近にメンタルヘルスの問題を抱えている人がいない人の方が、世界の見え方が180度変わることだろう。
この漫画を通して、「学生時代にいたアイツはこういう特性があったのかもな」と振り返ったり、もしくは現在身近にいる人が「もしかしたら『リエゾン』の中のあのキャラクターに近いかもな」と思うこともあるだろう。
だからといって、無闇に詮索せず、打ち明けてもらった時に受け入れられるような体制を整えておくことが重要だ。
メンタルヘルスは「心の癌」
冒頭でメンタル疾患のことを「心の風邪」と呼ぶことに対して疑問を投げかけたが、筆者なりの答えとしては、「心の癌」と呼ぶのが最もしっくりくるのではないかと思っている。
メンタル疾患に限らず、『リエゾン』でもメインで取り上げられる発達障害についても、基本的には一生つきまとう問題であり、先述した通り「完治」はない。
たとえ「寛解」したとしても、常に再発するリスクは背負わなければいけないし、再発した場合、元々よりもさらに悪化してしまうことが多いのだ。
なので「風邪」のような比較的軽い病ではなく、「癌」という表現が適切ではないかと考えている。
また、誰がいつ「心の癌」にかかってもおかしくはない。
ハンデがあっても生きていける
それでは、「完治」がないからといって人生を諦めて良いのかというと、決してそんなことはない。
確かに人より少しハンデはあるかもしれないが、挑戦のハードルを自分で無理に上げる必要はない。
マイノリティな部分や特性を理由にやりたいことを諦める必要はない
メンタル疾患・発達障害など、自分のマイノリティ的な特性を理由に本来やりたいことを諦めるのは非常にもったいない。
もちろん、健常者と全く同じフィールドに立つことは難しいかもしれないが、最近では社会が徐々にマイノリティに優しくなってきているし、働くことに関して言えば、障害者雇用の枠も色んな業種で増えてきている。
なので、やりたいことに、別の角度から挑戦するというのもひとつの手段だ。
筆者も休職を挟みながらではあったが、約3年半、“普通”の社会人をしてきたが、『リエゾン』を読んで、メンタルヘルスの重要性に気づき、かかりつけ医とも相談した結果、自分の病気を受け入れ、障害者雇用の枠で仕事を探し、働き口が決まった。
「本当の理想」とは少し違う形ではあるが、根本的な「やりたいこと」からはブレずに生きていけている。
まとめ
ここまで、メンタルヘルスや発達障害について、『リエゾン』という作品にも触れながら、その重要性を語ってきた。
繰り返しになるが、メンタルヘルスは「完治」するものではない。
あくまでも症状が落ち着く「寛解」が目指すべき状態であり、それでも最初のリスクがかなり高いことを知っておいていただきたい。
また、心が強いと思っていても他の病気と同じように発症リスクはあるので、気合いで乗り切ろうとせず、心療内科や精神科に受診しよう。
しかし、このようなハンデを背負っても、全てを諦めることだけはせず、自分の
体調や特性を理解しながら、様々なことに挑戦していただきたい。