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FF16とは何だったのか。【FFブランドの挑戦作】-復讐劇を装ったヒーロー物語-

編集・ライティング

シブヤ ユウキ

早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系卒業。雑誌の自主制作やクリエイターチームの結成などを行い、Web制作会社にディレクターとして入社。その後、フリーランスのディレクター・イラストレーターを経て、オウンドメディアのライター・コンテンツディレクターとなる。現在はマルチクリエイターとして活動中。

国民的RPGであり、今や世界にもその名を轟かすRPGゲームである「ファイナルファンタジー」、通称「FF」は2023年でついにナンバリング16作目を発売した。

この「FF16」は、これまでの「FF」の当たり前に真正面から向き合い、「新しいFF」を目指して制作された。果たして、「FF16」は「FFブランド」に新しい風を吹かせることはできたのだろうか。

この記事では「FF16」を中心に「FF」について見ていく。

「FFブランド」とは何か

そもそも「FF」について考える前に、前提知識として「FFとは何か」、特に「FFブランド」をよく知っておく必要がある。まずは、「FF」の歴史をさらい、次にそれらから見えてくる「FFらしさ」について簡単に解説していく。

「FF」の歴史

「FF」は、1987年にスクウェア・エニックス(旧スクウェア)がファミリーコンピュータ(ファミコン)向けに発売したRPGのゲームである。

1作目の『ファイナルファンタジー』以降、『ファイナルファンタジーⅡ』『ファイナルファンタジーⅢ』のように、ナンバリングがされているが、基本的にはストーリーの繋がりはなく、それぞれが独立した作品になっている。

2023年6月に『ファイナルファンタジーⅩⅥ』が発売され、ナンバリングタイトルは全16作品となっている。

また、「FF」はその当時の技術で表現可能な美麗なCGグラフィックなどを取り込むことでも知られており、多くのゲーム制作会社に影響を与えている。

「FFらしさ」とは何か

「FF」はナンバリングごとにストーリーの繋がりもなければ、時代や舞台の設定もバラバラである。しかし、各作品のどれを遊んでも「これはFFだ」と言える要素が詰め込まれている。

それが「魔法」「召喚獣」そして「クリスタル」だ。

例えば、中世ヨーロッパ的な世界観を舞台にした作品で、騎士たちが「クリスタルの加護」のもと集い、冒険していく、というような作品もあれば、現代や近未来的な世界観で「魔法」や「召喚獣」を駆使して戦う作品もある。

共通しているのは、どのような設定であってもそこに「魔法」「召喚獣」「クリスタル」という要素があることだ。

これらの要素が、全国のRPG好きの冒険心に火をつけ、結果的に世界的なヒットに繋がったのだろう。また、「FF」シリーズの共通要素として、「コマンド式ターン制バトル」というものがあったのだが、「15」では若干アクション寄りになり、「16」では完全に「コマンドアクション」に戦闘方式が変更された。

FF16という挑戦作

そして2023年、前作「FF15」から7年の時を経て発売されたのが「FF16」だった。「これは -クリスタルの加護を断ち切るための物語。」というキャッチコピーで、「FFブランド」への挑戦を告げた。

そもそもFF16とはどのようなゲームなのか

中世ヨーロッパ風の世界観の中に「クリスタル」や「魔法」があったら、という着想から出発した作品であり、主人公は一国の王子だったが、守ると約束していた弟が、目の前で召喚獣に殺されてしまい、その復讐のために世界を旅をするというもの。

伝統的な「FF」シリーズとは異なり、世界を旅する動機が「復讐」であるため、ダークヒーローの色が濃いのが特徴である。

システム面では、シリーズ初となる完全なアクションバトルの「FF」であり、従来の「コマンド式ターン制バトル」の要素を廃している。このように、今までの「FF」らしい要素を使いつつも、ストーリーの根幹やシステム面で「新しいFF」のあり方を追求しようとしたのが、この「FF16」ではないだろうか。

「復讐劇」を装った「ヒーロー物語」

殺された弟の復讐のために旅に出た主人公というのは、これまでの「FF」から考えると、かなり特異な存在だが、ストーリーを進めていくとその印象は薄れてしまう。

以下は本編のネタバレを含むので、未プレイの方やネタバレが嫌いな方はここでブラウザバックしていただきたい。

ストーリーの中盤、弟を殺した召喚獣の正体は主人公自身であることを知り、また、この世界を構築する「マザークリスタル」の存在によって「魔法」や「召喚獣」が存在するのだと気づき、全ての「マザークリスタル」を破壊し、「人が人として生きられる場所」をつくるために旅を続けることになる。

道中、生き延びていた弟とも再会を果たし、弟と共に「マザークリスタル」の破壊を進めていく。

つまり、比較的早い段階で、ストーリーの目的が「復讐」から「世界の救済」へと変わってしまうのである。この点が「FFらしさ」から脱しきれていないのではないかと筆者は感じた。

結局、主人公の復讐先というものはなく、「世界共通の敵=ラスボス」という存在が明らかになり、「いつものFF」のように「ラスボス」を倒して「世界を救う」ことがゴールになる。

これでは、単なる「ヒーロー物語」である。

FF16で成し遂げたかったものとは

おそらく、この「FF16」で成し遂げたかったのは、「FF」の当たり前を壊して、新しい時代の「新生FF」のイメージを生み出すことだったのではないだろうか。

その点でみると、世界観や設定などの素材こそ非常に魅力的ではあるが、ストーリーの運び方で賛否を呼ぶものになってしまったのだと思う。

「復讐」をテーマにした、ダークヒーロー的な物語が展開されるかのような触れ込みだったため、ストーリーを進めていくなかで、世界観こそ保ちつつも、結局は「いつものFF」に話が収束してしまっていたので、「新生FF」というイメージを世間に広めることには繋がらなかったのではないか。

もっと最初に掲げた通りの「復讐」にフォーカスして、主人公の個人的でダークな感情に寄り添ったストーリーテリングができていれば、好みは別れそうだが、触れ込み通りの「新生FF」になっただろう。

そこに、今作から導入されたアクションバトルが掛け合わさっていたら、もっと「名作」になっていたかもしれない。

まとめ

ここまで「FF」の歴史や「FF16」についてみてきた。「FF16」について、少し批判的な内容も含んでしまったが、筆者個人としてはものすごくハマっており、ストーリーを3周してしまった。

それだけのめり込める、「新しいFF」だったからこそ、惜しいと感じる部分もあったのだ。ぜひ、追加のDLCや次回作となるであろう「FF17」では更なる「新しさ」を見せて欲しいと思う。

ここまで読んで、本作が気になった方は実際にプレイしてみるのをおすすめする。

FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16) – PS5

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