INTERVIEWクリエイターインタビュー
【インタビュー】躁鬱詩人「右利き」さん「躁鬱でもものづくりがしたい」
早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系卒業。雑誌の自主制作やクリエイターチームの結成などを行い、Web制作会社にディレクターとして入社。その後、フリーランスのディレクター・イラストレーターを経て、オウンドメディアのライター・コンテンツディレクターとなる。現在はマルチクリエイターとして活動中。
今回は、双極性障害、いわゆる「躁鬱病」を抱えながら詩を詠んでいる詩人である右利きさんにインタビューを行った。果たして病を抱えた中での苦悩はあるのか、そしてそもそも詩と向き合うことになったきっかけは何なのか。
創作に少しでも興味がある人、足踏みをしてしまっている人にこそ、このインタビューを読んでいただきたい。ちなみに、インタビュアーである僕も躁鬱病だ。
それでは、みていこう。
右利きさんコラボ作品であるイラスト詩集「THE GIRL Poetry Edition」は2024年3月31日にKindleで発売予定。
THE GIRL Poetry Edition Kindle版
詩を詠むようになったきっかけ
ー 本日はお時間いただきありがとうございます。ぜひ、躁鬱病という特性を持った右利きさんに、創作に関してお話をお伺いしたいと思います。
こちらこそありがとうございます。どこまで実のある話ができるか自信はありませんが、お答えしていきたいと思います(笑)
ー それでは早速、右利きさんが自身の創作活動である詩を始めたきっかけを教えてください。
少し長くなるんですが、昔、本名名義でTwitterをしていたんですよ。本に関するツイートをしていたところ、とある編集者さんと縁あって繋がりました。
「#140文字小説」というハッシュタグで、ぼちぼちと発信をしていたり、それを作品にしていたりしたのですが、それもその編集者の方に褒めていただきました。
そして一昨年(2022年)に機会があって実際に会ったところ、「右利きさんには“詩”というスタイルが合っているのではないか」と勧められて、詩を始めたんですよね。
ー そうだったんですね。元々の文才もおありだったかと思いますが、短い文章で様々なことを読者に想像させるのはすごいことだと思います。プラットフォームは今もX(Twitter)なんですか?
以前は「右利き」というアカウントでは他の人の作品の感想やプライベートなことをただただつぶやいていただけなんですよね。
ですが、詩という短い文章ということもあってXで詩の投稿を始めました。
その時からnoteも併用していて、今では、noteに詩を書き溜めています。作品をまとめて見ることができるので。
Instagramもやっていますが、リポスト専用アカウントみたいになっています。
ー なるほど、確かに僕らが繋がったのも、右利きさんがご自身の詩のnoteに僕のイラストを使ってくれたことがきっかけでしたもんね。
躁鬱で困ったことや活かせたこと
ー 創作のきっかけについてお聞き出来ましたが、ご自身の特性である「躁鬱病」に関して伺いたいと思います。まずは、困ったことはありますか?
そもそも躁鬱の自覚が芽生えたのが小学生の頃で、急に怒りっぽくなったり、気分のムラがあったりしたんですよね。天気の影響も受けやすくて。
社会人1年目の時に波がコントロールできなくなり、通勤中や仕事の最中に訳もなく泣いてしまいました。2018年に躁鬱と診断してもらい、「自分が弱い」と責める理由から解放されてホッとしたのを覚えています。
生活リズムが乱れると症状が悪化してしまうらしく、仕事で遅くまで残ったり、仕事が分からず混乱したりして、心身に限界がきました。
また、躁になると多弁になって余計なことまで言ってしまうようで、人間関係を崩しそうになったこともありました。
ー なるほど。やっぱり自分でコントロールが効かない分、うまく付き合っていくのが難しいですよね。僕も躁鬱病なのでわかります。逆に躁鬱病を活かせたシーンはありますか?
やっぱり躁状態の時はエネルギッシュで行動力が桁違いになりますね(笑)全能感というか、無敵になったかのような。そういう時は、なんか先見の明があるような気もします。躁の時は、アイデアややりたいことが際限なく出てくるので、それらの組み立て、スケジューリングをしたり、作品をまとめたりします。
鬱の時はむしろ、病んでいることがエネルギー、創造性につながって作品を書き溜めますね。
なので、躁と鬱の特性をうまく使い分けるようにしています。
ー 全能感、とてもわかります!歯止めが効かなくなりそうですが、上手く付き合えているんですね。
そうですね、あと躁鬱とは別にHSPやADHDの気質も少しあるように感じています。ただし「社会のレールに乗るのが苦手なだけで、障害者だと思ったことはないよ」と父親に言われたことがあって、救われました。
ー それは温かいエピソードですね。必ずしもマジョリティのレールに乗らなくても良いと安心できます。
初めてのイラスト詩集を創ってみて
ー 今回、僕のイラストと右利きさんの詩をコラボして、イラスト詩集をKindleで発売する運びとなりました。いかがでしたか?
初めての試みでしたが、とても楽しかったです!大変なことは特になく、スムーズに楽しみながら制作することができました。
今まで、鬱という負のトリガーがないと詩が書けませんでしたが、イラストというテーマがあると躁のモードでも詩が書けることがわかったのは大きな成果です!
これからやってみたいこと・野望
ー それでは最後に、これからやってみたいことや野望などありますでしょうか?
とにかくたくさん作品を発表したいですね。眠らせている作品もたくさんあるので、大放出したいと思っています。公募にも挑戦を続けたいと思っていますよ。
ー 素敵ですね!創作に関して何かスイッチが入ったりすることはありますか?
自分の中に様々な自分、人格?がいて創作のスタイルやジャンルによって切り替わるんです。その中でも「右利き」としての自分が1番冷静で理知的かもしれないです。ただし、それぞれの自分を俯瞰している自分もいるんですよね。人格を自在に切り替えられるわけではないんですが。
作品を書いてみて、違う自分の存在に気づくことがあります。私のようにきっぱり人格が分かれているよりも、グラデーションのようになっている人に憧れたりもしますね(笑)
ー 僕にはない感覚の話なのでとても不思議で興味深いです!今年は様々な自分の力を発揮して飛躍の年になるように応援しています!また合作しましょう。
まとめ
いかがだっただろうか。躁鬱病という、社会的にはハンデになりうる特性を持ちつつも、とても精力的に創作活動に取り組んでいる。
筆者も今回インタビューした右利きさんと同じ躁鬱病なので、話を聞いていて共感できる部分が多かったが、右利きさん独自の特性もあり、とても興味深かった。
メンタルなどのハンディキャップで自分のやりたいことを諦めてしまっている人も多いかもしれないが、上手く付き合っていくことで、右利きさんのように人の心を動かす作品が作れるだろう。今後の作品も楽しみだ。
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